躊躇いのキス
さすがにタダチケットということもあって、席はそこまでいいものではなかった。
後ろのほうの、一番端の席。
だけどタダだし、なんたって雅兄とカップルシートで見れるんだから文句ない!!
「……で?
なんでお前、そんな端っこに座ってるわけ?
「え?あ、いや……」
自分で誘っておきながら、
カップルシートの端っこのほうへ身を寄せる自分。
せっかく密着できる椅子なのに、雅兄とあたしの間には
人ひとり入れちゃうんじゃないかというくらいの隙間があって……。
「お前が誘ったんだから、もっと積極的に来い」
「きゃっ……」
雅兄はグイとあたしの肩を寄せると
密着するように座らせた。
「お前はいつも中途半端すぎなんだよ」
「……」
頭のすぐ上で聞こえる声に、ドキドキを感じながら
手汗でびっしょりになるくらい、手のひらはぬるっとした感覚があった。