躊躇いのキス
10章 特別じゃない
「ありがとうございました」
紙袋を片手に、
嬉しそうな顔をした女性客に一礼をした。
今は月末。
給料日がきたということもあって、それなりにジュエリーも売れる。
だけどバレンタイン前の1月の月末だけあって、
いつもの売れ行きよりはいかないけど……。
「侑那ちゃーん」
「はい?」
店内にお客さんが誰もいないことから、
先輩である理恵子先輩が声をかけてきた。
「今日このあと空いてる?
飲みにでも行かない?」
「はい、大丈夫ですよー。
行きましょう行きましょう!」
理恵子先輩とは、たまにこうやって飲みに行くことがある。
とはいえ、今年になってから、まだ一回も飲みに行っていなかったので、久々の誘いに快く承諾した。