躊躇いのキス
「ってか、聞いてよ!
幸也がさー……」
お、始まった……。
理恵子先輩と飲みに行くと、たいてい彼氏さんの話ばかり。
今日はどうやら愚痴から始まったということは、いい話ではないらしい。
惚気から始まるか
愚痴から始まるかで
このあとの2時間はだいぶ変わる。
今日はヤケ酒コースだな。
なんて思いながら、苦笑いで受け答えをしていた。
「ちょっとお手洗いに行ってきますね」
「はーい」
あれから2時間。
ほとんど理恵子先輩の一方的な会話で時間が進み、
そろそろお開きが近いと思って、お手洗いへと寄ることにした。
明日はお店の定休日。
家に帰ったら、ゆっくりお風呂にでもつかろう。
そんなことを思いながら、お手洗いから出た。
自分の席へ戻ろうと思ったけど、
トイレから離れていたせいか、若干迷って……。
来た道とは違う道を通っているようで……
「……やっぱ、マジ……なんだ」
と、聞きなれた声が聞こえたときには
ビックリして心臓が飛び出るかと思った。