躊躇いのキス
「お前、今日休みなんだって?」
「え?あ……うん…」
よく見ると、雅兄はいつも朝見るようなスーツ姿で
時間を見てないから分からないけど、これから学校へと向かうんだと思う。
「じゃあ、今日は休みか……。
明日からはしばらく忙しそうだし……んー……」
雅兄は何か考え込んでいて
一人ぶつぶつと言っている。
全く意味の分からないあたしは、ただじっと雅兄の顔を見つめていた。
「来週の金曜」
「え?」
「仕事終わったら、侑那の店に行くから」
「なんでっ?!」
考えていた答えが見つかって、勝手にそんな言葉を言っている。
あたしの店はジュエリーショップ。
雅兄が来る目的なんか、見当たらなくて……
「お勧めの指輪。
見繕っといて」
その言葉に、一瞬にして意味が分かってしまった。