躊躇いのキス
呼び捨てされたことに、
少しだけ驚いて振り返った雅兄は、
「何?」
とくに気にしたそぶりを見せず、返事をするだけ。
そんな反応をされては、こっちも何も言いようがなくて……
「ゆ……指輪の…サイズ、は……?」
聞きたくもないことを
聞いてしまう自分がいた。
雅兄は少しだけ考えるようにして目線を上へと上げると、
「お前のサイズで用意して」
と残酷な言葉を吐く。
彼女とあたしの指のサイズは、同じくらいなのだろうか……。
こんなところで同じになんかなりたくない。
「じゃ、楽しみにしてるから」
それだけ言うと、雅兄は今度こそ部屋から出て行った。