躊躇いのキス
「………な…に……勝手なこと言って……」
階段を下りる音を聞きながら
今さらながら文句が湧き出てくる。
のうのうとあたしに、彼女へのプレゼントの指輪を見繕えという雅兄は、いったいどういう神経をしているのだろうか……。
一応あたしは
仮でも彼女という立場であって……。
本物の彼女が出来れば
仮の彼女なんかどうでもいいってこと?
そんなの当たり前かもしれないけど
やっぱりそれじゃあ、あたしの気持ちが宙ぶらりんのままになっちゃうじゃん。
「彼女へのケジメつける前に
あたしとのケジメをつけてよ……」
流れ落ちるのは涙。
そう。
悔し涙……。
あたしは決して
雅兄にとっての、特別な女の子ではなかった……。