躊躇いのキス
《じゃあ、今度セッティングしとくから。
例の彼もいれて》
「例の彼?」
《やっぱ忘れてるか……。
ほら、雄介くんと別れたって聞いた時、紹介しようと思った人がいた、って言ってたでしょ?》
「あ、そういえば……」
確か、最初智世に話をしたとき、智世は雄介にあたしがフラれたと聞いていたので、新しい恋をさせるため紹介しようとした人がいた。
《そいつだけでもいいけどさ。
人数多いほうが、選択肢も増えていいだろうし》
「あはは……」
《じゃあ、今度の金曜日あたりで考えておいて》
「あ、うん……」
《ちゃんと自分なりに努力するんだよ!》
そう言って、智世の電話は切れてしまった。
雅兄以外の人と恋、か……。
思えばどうやって、雄介のことを好きになったんだっけ……。
あの時のあたしは、
どうやって雅兄への想いを封印したんだろう……。