躊躇いのキス
「あ……」
「おはよ」
次の日の朝、
少しだけ早めに出たそこに、不機嫌そうに……だけどニコリと微笑む雅兄の姿があった。
「お、おは、よ……」
「やけに早いんだな。
昨日もこれくらいだったわけ?」
「……」
雅兄が怒っている原因とすれば一つだろう。
ここ最近、土日以外は途中駅まで車で送ってくれることが恒例になっていて……
あたしが毎朝、雅兄が家を出るタイミングを見計らって、家の前で待っていた。
だけど昨日は雅兄が出てくる前よりもずっと早くに家を出て
送ってもらわず最初から電車に乗り込んだのだ。
今日もそのつもりで、早めに家を出たのに
分かり切っていたかのように雅兄があたしの家の塀でもたれかかっていた。
「乗れば?」
「……いい」
「は?」
当たり前のように促す雅兄に、一歩引いて拒んだ。