躊躇いのキス
「今まで散々乗ってきただろ。
何今さら?」
「……」
それは……
あたしが仮の彼女のという立場でもあったし、
雅兄に本物の彼女、という存在がいなかったからで……。
(うん。
好きだ……。
一人の女として)
あんなふうに
心から愛おしそうな顔をした雅兄を見たら、
もう図々しく、雅兄の助手席になんか乗れるわけない。
「ほんとに……いいから…これからも……」
「なんで?」
「……」
「侑那?」
「っ……乗れるわけないじゃんっ!!」
あたしは、なおも人の手首を掴んでくる雅兄に、声を荒げた。