躊躇いのキス
 
「乗れるわけないでしょっ!?
 雅兄の車になんかっ……。

 乗せるべき相手はあたしじゃないじゃんっ!!」


「意味わかんねぇ。
 俺の車に誰を乗せるかなんて、お前には関係ねぇじゃん」


関係ない。
その言葉が、グサッと胸に刺さる。


「……そ、だよ……
 関係ないよっ……。

 だってあたしはっ……所詮仮の彼女でしかないもんっ」


そう。
どんなに彼女という形をもらったって、
それは正式な彼女ではなくて……。

雅兄にいつ、あたし以上に大切な存在が出来るか分からない。
そしてそれに文句を言える立場でもない。

だから雅兄のことなんか、もう忘れるんだ。



「もうあたしのことなんかっ……―――っ!!」



あたしの言葉は
最後まで言い切ることなんかできなくて……



「……っ…」



その唇は
雅兄の唇によって塞がれていた。
 
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