躊躇いのキス
 
(彼女になんかさせてやんない)


「…っ」


なんなの……
なんなのっ……!!


頭の中で、雅兄の言葉がぐるぐると思い出される。


(言っとくけど、
 そう簡単には逃がさないから)


彼女にさせる気はないくせに
人の心を掴んで離そうとしないで……



あんな……

キス、してっ………。



唇からも
あたしを離そうとしないのが伝わって

頭ではそう簡単には思い通りにならない、と言い聞かせているのに
心がグイグイと引き寄せられていく。



もう嫌だ。
こんなにも報われない想いを抱えているなんて……。



あたしはもう
雅兄のことを忘れたいんだ―――。

 
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