躊躇いのキス
 
「ご、めん……」


つい謝ってしまったけど、
あたしたちは、この前言い争ってから会うのは初めてで……。

雅兄はいったい、どういう心境でこの場にきたんだろうか……。


わざわざ彼女にあげる指輪を、あたしの店で買わなくたっていいじゃん。
ジュエリーショップなんていっぱいあるんだし。


そう思っても、それを言ったらあからさまに嫉妬しているようにしか思わせない気がして、口に出せなかった。


「とりあえず、店戻るぞ。
 ここさみー」

「えっ……いや、でも……」


さっさとあたしが出てきた店の中へ入ろうとする雅兄に、すぐにはついていけなかった。

彼女にあげるための指輪を、わざわざあたしが選ぶのも嫌だし……
それに……


「……あたし…
 このあと、用事……あるんだけど」

「へー。何?」

「……合コン」


正直に言おうか悩んだけど、
「合コン」というワードを出すことで、もう雅兄のことなんかなんとも思ってないって見せつける意味で口にした。
 
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