躊躇いのキス
「何お前。
堂々と浮気宣言?」
「え?」
だけど返ってきた言葉は、予想外の言葉。
浮気宣言って……
だってべつにあたしたちは……
「仮でも彼女だろ。
彼氏に内緒で合コンに行こうとしてんじゃねぇよ」
「え、いや…でも……」
雅兄は怒っているのか、いつもよりだいぶ口調がきつい。
声もワントーン低いし、なんかこれ以上断るのも怖いくらい。
「とりあえず来い」
「あ、ちょっとっ……」
雅兄はあたしの手首を掴むと、今度こそ店の中へあたしを連れ戻した。
自動ドアが開くとともに、
聞きなれた人の声の「いらっしゃいませ」。
もちろん、現れたのがあたしであることから、
顔見知りの店長も理恵子先輩も驚いていた。