躊躇いのキス
13章 彼の真実
「………え…?」
あまりにも信じがたいその台詞に
間抜けな声だけが一言漏れて、あたしはただじっと雅兄の顔を見つめていた。
その表情がくしゃっと歪み、ため息が漏れる。
「返事。
してくれないと、俺がバカみたいなんだけど」
「え……。で、でも……」
涙すらも出てこないくらい、現実味が湧かなくて
ただただうろたえた。
「早く、YESかはい、か言って」
「あ、えっと………って、どっちも同じじゃんっ!」
雅兄の相変わらずな冗談な言い回しに、ようやく頭が回転し始めて突っ込みを入れられた。
雅兄も面白そうに頬を緩めている。
YESも、はいも早く言いたい。
けど……
やっぱり気になるのは……
「………か、のじょは……?」
この間見た、雅兄と一緒に飲んでいた綺麗な彼女の姿で……。
あの告白も
確かにこの耳で聞いた。