躊躇いのキス
 
突発すぎる言葉に
涙も思考回路も停止。


あたしの耳は、おかしくなったのだろうか……。


「だからさっきから、早くYESかはいか言えって言ってんじゃん」


耳元で囁く声は、強引だけど優しくて
思考回路は停止したままなのに、涙だけがまた勝手に零れ落ちていく。


「い、みわかんないっ……」
「わかんだろ?
 っつか、プロポーズもしたばっかだろ」
「だ、って……」
「もう誤解だって解けただろ?」
「……」


そうだ。
ずっと心の中に入っていた彼女という存在も、誤解だと分かった。

そしてあたしを彼女にさせない、と言った意味も、
それは一歩先を言った台詞だということが分かって……



「逃がすつもりも、離すつもりもないって言ってんじゃん。

 やっと自分にとって大事な女が誰か分かったんだから」


「……っ…」



思考回路も作動開始。

涙はもうとめどなくあふれ出ている。



「侑那……。

 結婚しよ」



「………ま、さにぃっ……

 うんっ……」




あたしの22年の想いは

ようやく成就した。
 
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