躊躇いのキス
途端に鳴り出す携帯。
それは忘れかけていた智世からの着信で……。
「やばっ………もしもし!?」
「出んのかよ」
思わず、雅兄の体から離れて、智世からの電話に出た。
《ちょっと侑那!
あんた何してんの?!》
「ご、ごめん……」
そうだ。
あたしは合コンに行く約束をしていたんだ。
電話先の智世は、当然のようにご立腹で……。
「もしもし?智世ちゃん?」
「あ、ちょっと!!」
返事に困っているあたしから、雅兄はひょいと携帯を取り上げてしまう。
雅兄と智世は、特別面識はないけど、お互いにあたしからよく話を聞くので名前くらいは知っている。
その二人が今、初めて会話をするわけで……。
「ごめん。
侑那、俺と結婚するから。
合コンとか行けないよ」
《え?は?ど、どういことですかっ!?》
「詳しいことは、また今度侑那から聞いてね」
《ちょっ……》
驚く智世の声は大きすぎて、隣にいたあたしまで完全に聞こえていた。
雅兄は勝手に電話を切ってしまい、さらに電源まで落としてしまう。