躊躇いのキス
 
「邪魔はされたくないでしょ」

「え、でも……」


もとはと言えば、智世はあたしのために合コンをセッティングしてくれた。
それを勝手な都合でドタキャンするなんて……。


「あとで俺からもお詫びするから」
「……うん…」


でもやっぱり、今は雅兄のもとから離れたくない。

あたしもあとで、目いっぱい謝罪するから、
今回だけは許して。



「さて、そしてこれはいつしてくれるんでしょう?」

「え?あ……」



ずっと雅兄の手の中におさめられている、ネイビーの箱。

そこで輝く、エンゲージリング。


「……お願い…します……」


今さらそれを思い出し、おずおずと左手を差し出した。

雅兄は少しだけ拗ねたようにため息を吐くと、指輪を箱から取り出し、あたしの手を取った。
 
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