躊躇いのキス
 
「お前が欲しかったのはそれだろ?」
「え?」


指輪に見とれていると、雅兄がしたり顔で微笑んでいた。

首をかしげて見上げるあたしに、言葉を続ける。


「3種類俺に見せて説明してるとき、すぐに分かった。

 お前が欲しいって思ってるのはコレだなって。

 だからそれにしたんだよ」


「……」


最初から、何もかもがお見通しのようで……。

でもまさかあの時、自分にくれるものだとは思っていなかったから……。


ちゃんとプライドを捨てずに、ジュエリーを語れてよかった……。


「うん……。
 ずっと……これが欲しかったの」

「よかったな」

「うん……。ありがとう」


素直にお礼を言うあたしに、雅兄はポンと頭を叩いた。
 
< 184 / 203 >

この作品をシェア

pagetop