躊躇いのキス
「お前が欲しかったのはそれだろ?」
「え?」
指輪に見とれていると、雅兄がしたり顔で微笑んでいた。
首をかしげて見上げるあたしに、言葉を続ける。
「3種類俺に見せて説明してるとき、すぐに分かった。
お前が欲しいって思ってるのはコレだなって。
だからそれにしたんだよ」
「……」
最初から、何もかもがお見通しのようで……。
でもまさかあの時、自分にくれるものだとは思っていなかったから……。
ちゃんとプライドを捨てずに、ジュエリーを語れてよかった……。
「うん……。
ずっと……これが欲しかったの」
「よかったな」
「うん……。ありがとう」
素直にお礼を言うあたしに、雅兄はポンと頭を叩いた。