躊躇いのキス
最終章 彼女の正体
「え、今日?」
「そー。夜迎え行くからあけといて」
「うん……」
いつもの朝。
送ってくれている車の中で、突然の誘い。
どうやら今日の夜、一緒に食べに行こうということだった。
「でもどうしたの?急に……」
「約束しただろ?会わせてあげるから」
「え、誰に?」
「お前が気になってる彼女」
「ええっ!?」
その発言に、驚きの声を上げてしまった。
「お前、うるさい」
「やっ、だって……」
確かに気にはなっているけど
そんないきなり対面するなんて……。
「大丈夫。
侑那が心配するようなことは何も起きないから」
「……う、ん…」
鼻で笑うその姿は、若干癇に障ったけど
多分雅兄がそう言うんなら大丈夫だろう。
あたしは緊張する面持ちのまま、駅で雅兄と別れた。