躊躇いのキス
 
「それにしても、ほんとビックリしたよー……」


朝、掃除をしながら理恵子先輩からはさっきから同じ言葉ばかり。

それもそのはず。
あんなにうまくいっていないと言っていたはずの彼が、昨日は一緒に来店して、エンゲージリングを購入して……。

その指輪が、今、あたしの手元にキラキラと輝いている。


「いろいろすれ違ってた、ってことだよね」
「まあ……そうなりますね…」


すれ違っていたとすればそうだけど。
この場合、雅兄がまわりくどすぎたんだ。

だからいらない誤解とか生んで……。


「でもうまくいってよかったじゃん!
 できることなら、新しい恋をするよりも、あの彼とうまくいきたかったんでしょ?」

「……はい…」


まだまだ納得できないところは確かにあるけど
あたしにとって、雅兄があたしを選んでくれたことが一番うれしくて……。


「結婚式には呼んでよ!」

「はいっ……」


こうやって、誰かに報告できることは、やっぱり嬉しいことである。
 
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