躊躇いのキス
「お疲れ」
「あ、お待たせ……」
今日はクローズまでだったので、時間は9時を回ったところ。
思えば、こんな遅くになってしまったけど、相手は大丈夫なのだろうか……。
「じゃあ、行くか」
「うん」
忘れかけていた緊張が、再びよみがえっていく。
いったい、あの時見た彼女は、雅兄にとってどんな存在なんだろう……。
気になるけど、どうせ今聞いたってはぐらかれそうで……。
「遅くなっちゃったけど、彼女さん、大丈夫なの?」
「平気だと思うよ。
向こうも一人じゃないし」
「そうなんだ……」
なら、大丈夫かな……。
それでもやっぱり足は自然と速くなって、
待たせたら悪いな、なんて気持ちに切り替わっていた。