躊躇いのキス
「はぁ……」
重たいスーツケースを持って
しばらく歩いていなかった道なりを引きずりながら歩く。
もうあの家に戻ってくることなんかないと思ってた。
あのまま雄介と結婚すると思っていたから……。
だけど現実、
突然の別れを切り出され、
同棲していたあの家にいられるわけにもなく、あたしは実家へと出戻ることにした。
前もってお母さんには話したけど
「もう戻るつもりはないって言ってなかった?」
と厳しい言葉が返ってきた。
それはそうだ。
もともと親は、あたしの同棲にいい顔はしていなかったから……。
だけど結婚を前提という話で、
しぶしぶ同棲を許可してくれ、
なんとか絶縁にもならず、3年間たまに帰省をしながら同棲生活を送ることが出来ていたのだけど……。