躊躇いのキス
「へえー……」
「な、何……?」
雅兄は距離を詰めてくると、まじまじとあたしの顔を見下ろしてきた。
何か言いたそうな、含み笑いをして……。
「……どうせ、化粧なんか似合わないよ」
照れくさくて、あえて自分をけなす言葉を選んだ。
だけど雅兄は同意することなくて……
「そうか?
指先までネイルもされてるし、化粧もこの時間だって言うのに崩れてないし……。
綺麗だって思うケド?」
「…っ」
予想外の褒め言葉に、一気に顔まで熱が上昇した。
さらりとそんなことを言ってのける雅兄に、振り回されているようで嫌だ。
あたしはもう、子どもの時のあたしじゃない。
それなりに男の人と付き合ってきたし、
雅兄に言われた通り、褒め言葉だってそれなりに受けてきた。
翻弄されそうな自分を抑えて、
キッと雅兄は見上げた。