躊躇いのキス
隣に並ぶ女の人は、多分雅兄と同じ学校の子。
高校の制服を身に着け、仲よさげに歩いていて……
そのまま、雅兄の家の中へと消えた。
う、そ……
でも……。
今まで考えたことなかった。
だけど当然のことだった。
雅兄に彼女がいるということは。
雅兄はカッコいい。
面白いし運動できるし優しいし。
雅兄のことを好きになる人はいっぱいいる。
だけど誰よりも近くにいたから
ずっと誰かに取られるなんてことを思ったことなかった。
5歳差というハンデ。
メリハリのない体。
焼けた肌に絡まる髪。
化粧っけのない顔。
《雅兄……》
《お、どうした?》
《………好きっ……》