躊躇いのキス
彼女が帰ったであろう時間に、雅兄の家に行って
雅兄がくつろぐ部屋へと上がった。
雅兄はもうお風呂に入ったみたいでシャンプーの香りがして
さっきまであの女の人と一緒にいたのかな、って思うと胸が痛くて仕方なかった。
《どうした?いきなり……。
俺も侑那のこと、大好きだよ》
突然のあたしの告白も
決して真面目には受け取ってくれなくて。
いつものように笑って、受け止めてくれるだけ。
そうじゃない。
あたしはそんな扱いを望んでいるんじゃない。
《雅兄にとって……
あたしはどういう存在……?》
たとえそこにまだ異性としての感情がなくても
ただ一言、女の子として見てもらえる答えならよかった。
だけど雅兄は、
当たり前のように口を開くと、
《大事な妹》
とだけ答えた。