躊躇いのキス
その日……
あたしは10年以上もの想いの失恋をした。
雅兄にとってあたしは
最初から恋愛対象ではなかった。
そりゃそうだよね……。
高校生からしてみれば、小学生のあたしなんて、ただの子供にしか見えない。
分かってた……。
分かってたけど……
《最近、雅人君のところに行かないけどどうしたの?
喧嘩でもした?》
《べつに。
いつまでもお隣さんだからって、ベタベタしてらんないし》
中学校に上がる頃には、あたしは雅兄の家に上がることはなくなって
雅兄も大学生ということから、ほとんど家に来なくなった。
とは言っても、
お母さんが必要以上に雅兄のことを気に入っているので
たまに呼んでは一緒にご飯を食べるくらいはしてたけど。
でも……
《まさにぃ!》
と、バカみたいに呼んで
気軽に触れるようなことはしなくなった。