躊躇いのキス
 
「ふぅ……」


湯船につかって、漏れるため息。

やっぱり実家のお風呂のほうが大きくて気持ちがいいな……。


雄介と一緒に住んでたマンションは、決して狭くはなかったけど
それでもやっぱり実家のお風呂に比べたら1回りくらい小さくて……。

足を悠々と伸ばせる実家のお風呂は、気持ちがよかった。


なんか……
ほんと情けない……。


ぶくぶくと顔の半分まで沈んで
今さらながら自分に情けなくて泣けてきた。


と言っても
実は雄介に振られてから全然泣けてなくて……。


振られたときは、必死に縋り付いたけど
無理だと分かってからはもう涙もこぼれなかった。


力をなくした自分。
この家を出なくちゃ……ってすぐに思って……。


雄介と話し合った結果、
あたしは実家に戻ることに。

必要最低限の荷物はスーツケースに詰めて、
あとは宅配便で送ってくれるらしい。



優しいけど、ひどい男で……
ひどい男だけど、優しい男で……



そんな奴だった。
 
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