躊躇いのキス
「ご飯も出来てるわよ」
「あ、ありがとう」
お風呂から上がって、リビングの前を通り過ぎようとしたら、お母さんが声をかけてくれた。
お父さんはまだ仕事から帰って来てないみたいで、ちょっとだけホッとした。
まあ、帰ってきたらちゃんと話さないといけないんだけど。
ひとまず上に上がろうと、階段を上がって自分の部屋へと向かった。
一番奥にあるあたしの部屋。
扉の前には、いまだに【ゆきな】と書かれたプレートがぶらさがっていて……。
「はぁ……」
2度目となるため息を吐きながら、部屋の中へと入った。
その瞬間……
「………え…?」
思わずその場で固まる。
あたしの目線の先には、
ベッドの布団の中から、ダークブラウンに染められた頭がひょっこりと飛び出ていて……
「きゃーーーーっ!!」
その姿に叫び声をあげた。