躊躇いのキス
 
「侑那?いったいどうしたの?」
「おか、おかあさんっ……
 あたしの部屋に見知らぬ男がっ……」
「見知らぬ男?
 ああ、雅人くんね」
「え?……雅兄……?」
「そうよ。さっき来てたんだった」


顔をひょっこりと覗き込んで、その頭が雅兄……雅人だと分かると、お母さんは納得してまた下に降りてしまった。


いやいや。
そこで納得するのおかしいでしょ。
ここ、あたしの部屋だよ?


とはいえ、あたしも最初は誰かも分からない男が寝ていると思って声をあげてしまったけど
相手が雅兄と知って大きくため息をつく。

そしてあたしの叫び声なんか気にも留めず、いまだに布団の中に眠り続ける雅兄のもとへ行った。
 
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