躊躇いのキス
「………そう、なんだ……」
一通り話し終えて、智世は目を見開いたまま背もたれに寄りかかった。
雄介に振られたのは確かだけど、雄介はあたしが別に好きな人がいるということを見抜いていたこと。
あたし自身、それに気が付いていなかったけど、実は図星であったこと。
そして自覚してしまって、その彼に告白をして、振られたこと……。
智世は頭の中で整理するように、しばらく口を閉ざしていた。
「……なんか、さ……。
すごいね。雄介」
「え……?」
沈黙している間に、注文していたパスタが届いて、熱々の湯気が舞うパスタが並べられた。
フォークを手に取って、智世が口を開いた。
「だって、侑那自身、その彼が好きだってこと、気づいてなかったんでしょ?
それに気づいてた雄介って、相当侑那のことが好きだったんだね」
「……そう、かな…」
「しかもそれを認めて、身を引くとかいってさー。
カッコよすぎでしょ」
「……」
苦笑して、パスタをくるくると巻き、口に運ぶ智世。
あたしもつられて、フォークを手に取った。