躊躇いのキス
 
「でも結局さ。
 雄介が身を引いて……、その彼にも振られちゃって……。
 あたしはさみしい独り身になっただけ。

 自分でもほんと、バカな女だなー、って思うよ」


ははっ、と笑ってパスタを頬張る。


雄介は確かにカッコいい。
けど、単純に、あたしに呆れた部分もあっただろう。

だからあたしから離れたんだ。


「……まーねー。
 せっかく雄介が身を引いたみたいだけど、フラれちゃったら元も子もないよね。

 どうするの?これから」

「どうするも何も……。
 きっぱりと振られちゃったんだし、あきらめるしかなくない?

 向こうには、CAの綺麗な彼女がいるんだし。
 あたしなんか、いっつも子ども扱いされて、女の子に見られたことないよ」

「……なんか、可哀そうな子だね。アンタも」

「可哀そう、言うな」


ズバッと言ってのける智世に、思わず突っ込む。


可哀そうというか、単純にバカな女なだけだ。


だって雅兄には、10年前にも一度振られてるんだから。
 
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