躊躇いのキス
「………ああ、そっか」
ようやく頭がはっきりしてきたのか、雅兄はあたしの上からどくと、起き上がってベッドの上に座り込んだ。
「……目が覚めました?」
「ん」
とは言え、まだまだ眠そうで……。
いったい、人の部屋に勝手に上り込んで、何をしてるんだか……。
あたしと雅兄……神田雅人(カンダ マサト)は、いわゆる幼馴染。
と言っても、年は5歳も離れているので、
世間で言う幼馴染という友達枠みたいな関係といったよりも
兄妹といった響きのほうが近いのかもしれない。
小さい頃は、それこそいつも雅兄に引っ付いて歩いていたけど
ある日を境に、それはなくなり……。
顔を合わすのは、あたしが家を出て以来。
まともに話すとなれば、もしかしたら軽く10年ぶりになるかもしれない。