躊躇いのキス
 
「雅兄っ……」
「はーい……」
「はーい、じゃなくて!
 起きてよ!ここ!あたしの部屋なんだけど!!」
「んー……?」


雅兄の寝起きの悪さは相変わらずで、なかなかパッと覚醒をしてくれない。

だけどようやく目がうっすらと開いてきて、じっとあたしを見つめてくる。


「あ……」
「侑那……」


目が合った瞬間、ドキンドキンと胸が高鳴って、文句を言いたいのに何も出てこなくなる。

だけど負けたくなくて、なんとか平静を保って口を開く。


「何勝手に人の部屋入って来てるの……。
 ここ、あたしの部屋だって言ってんじゃん」

「……侑那のものは俺のものでしょ?」

「な……」


寝ぼけているのか……。
それともハッキリしているのか……。

どちらかも分からない返しに戸惑ってしまう。


っていうか、どうして普通にしていられるんだろう。


あたし、確かにこの前、振られたよね……?
 
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