躊躇いのキス
 
「出てってよ……。
 お母さんも、お父さん迎えに出て行っちゃったし」

「……ふーん…?」


それを聞いて、雅兄はようやく上半身だけ起こした。

大きく伸びをして、あくまでもマイペース。


「こ、困るんだけどっ……」
「何が?」
「あ、たし……雅兄に振られたんだし……」
「うん」
「うん、って……。
 だからこうやって勝手に人の部屋に入られるのは……困る……」
「なんで?」


素で返してるのか、いじわるをしているのか……。

雅兄は下から覗き込むようにあたしを見据えている。


なんだか泣きそう……。



「あ、侑那」

「……何?」

「この前のネックレス、ありがとな」

「え?」

「渡した。彼女に」

「……」



泣くこと決定。

雅兄のデリカシーのなさに苛立ちさえ感じる。
 
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