躊躇いのキス
「ま、さにぃ……?」
「……」
雅兄はそっと腕をとくと、視線をあたしへと絡めてきた。
ほんのり茶色がかった瞳が、じっとあたしを捉えていて、
人生で一番といっていいほど、心臓が速度を増していく。
「どう考えたって、彼女のほうが美人なのに」
「ひど……」
「だけどお前の顔ばっか、思い浮かんでた」
「……」
雅兄の頭の中のことを……
自惚れてもいいだろうか……。
もしかして……
もしかしてこれは……
「侑那」
「……」
そっと髪をかきあげられ
頬に手を添えられた。
20年以上想いを寄せていた雅兄が
あたしの顔を引き寄せる。
あ、たし……
ようやく………
「………なんて、調子に乗るな」