躊躇いのキス
 
「いたっ……!!」


コツンと頭突きされたおでこ。

目を閉じかけていたのに、その目を大きく見開いて……


その時にはすでに、雅兄はあたしの頬から手を放していた。


「な、にすんのっ……」
「お前が調子に乗ってるから」
「それは雅兄がっ……」


だってどう考えても、今の流れはキス……しそうだったし。


ってあれ……?
もしかしてあたし……からかわれてただけ……?


「……最低っ!!」


そう思うと、一気に恥ずかしさと悔しさが跳ね上がって
身を預けていた雅兄の体から遠のいた。


こんなことでからかわれるなんて悔しすぎるっ……。
 

やっぱり、彼女と別れたってことも嘘で、
あたしをからかってただけで……。


「……っ」


それに気がつくと、やっぱり涙があふれ出てきた。
 
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