独り言<あるOLの一日>
本来「パン」は、小麦粉と牛乳とバターやイースト菌なんかでできる自然に近い食べ物で、わざわざ高級な物を買う必要などないはずなのに‥である。

しかし、スーパーやコンビニで売っているパン類の原材料の欄をよく見てみると、カタカナの聞いたことのない材料がやけにたくさん表示されていたりする。

真奈美はいつも不思議に思って眺めていたのだが、ある日ふと気がついた。

そういえば、最近食パンや牛乳がかびたのを見たことがない‥。

小学生の頃かびがはえた給食のパンや牛乳が教室の片隅で発見されると、大騒ぎになったものだ。

おにぎりもそうだ。

ご飯と塩と海苔、鮭やタラコくらいのはずなのに聞いたことのないカタカナの物質がなんだか結構入っている。

だからといって、そういうカタカナ材料の少ない無添加の物を買おうとすると予算が
倍近く必要になるから買い続けることができない。

こういうほんとに些細な日常の出来事が真奈美には妙にひっかかる。

健康もお金で買わないといけない時代なのである。

お金があると身体にいい物をすすんで食べられて、

お金がないと添加物や遺伝子組み換え○○が入っているかもしれない大量生産廉価品しか選べないなんて‥。

せめて、パンくらい安心な物が食べられる世の中であってほしいと思ったりする。

でも、きっと食パン一斤の値段なんて考えたこともないヒトが世の中をリードしているのだ。

プリントアウトに失敗したコピー用紙を受け皿にしてちょっとカリカリになったトーストをかじりながら

「はぁ~」

とため息をついた真奈美は、

「どうして朝からこうどうにもできない事を考えちゃうかなぁ。ほんとに情けないわ。」と思うのだった。
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