独り言<あるOLの一日>
そして、初めて派遣されたのがここだった。

二年間派遣社員として働いた。

その後、この会社の子会社に派遣され、一年半前にまたここに派遣されてきた。

真奈美が前回派遣された時に新入社員だった男子社員の中には主任になり、給与も真奈美より遥かに多い奴がいる。

女子社員の給与は大して変わらないが、でも、十才近く年下の小娘と同じだなんて

「一体何やってるんだろう」

‥と正直情けない気持ちになる。

おまけに彼女たちにはある程度保障された身分とボーナスがある。

比べても仕方ないけど、そんな事を考えるとつい

「隣の芝生が青く」見えてしまう。

つまり、どうしたって「負け組」だ。

だからといって、気分が落ち込んだ時に、ついつい求人雑誌を買ってみたりするのだけど、これといってやりたい仕事も思い当たらない。

しかも「35歳まで」が多いことに気づいて動揺しても、またいつもの慣れた生活に埋もれて月日が過ぎてしまう。

この繰り返しである。

なんとかこの堂々廻りから脱却したいのに、きっかけがつかめないでいる。

一体どうしたらいいのだろうか‥。

 あ、もう5:30p.m.だ。

今日は、特に急ぎの用事もないので、帰ることにした。

営業マンが帰ってきたら、また雑用を頼まれ残業するはめになる。

別に仕事は嫌いではないけど、この仕事は真奈美でなくても真奈美がいなくても、
何も問題なくこの会社は、回っていくのである。

真奈美がいなきゃ会社が成り立たないなどという事はありえない。

何か特殊な能力があるわけでもないし、そんな大それたことが一派遣社員に期待されるわけがない。

わかってる‥そんなこと。

自分にしかできないことが何かひとつくらいあってもよさそうなものだが情けないことに何もない。

『はぁ~。』

と思わずため息が出た。

『ま、いいや、帰ろう』

パソコンの電源を切り、机を片付け、周囲のデスクに置きっぱなしになっているカップを集めて給湯室で洗って一旦席に戻る。
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