*ヒーローボーイズ*
あたしはこの電話があっても今まで通り元気に明るくいこうって思った。
けど、こいつはそうはさせてくれなかった。
毎日毎日、朝起きると必ず鳴り出す家の電話。
それはあたしにとっては恐怖のサイン、電話を手に取らなくても勝手に再生される。
『なぁ羽月、頼むからもう一度俺のところに戻って来いよー、欲しい物があれば何でもやる、金か?家か?…でもやっぱ、羽月にそんな物は要らないよな?お前には俺だけが居ればいいんだよな?』
そんな事言われても、初めはあたしだって言い返したりしてた、でもそれは自分から恐怖の階段を登ってるようなものだった。
あたしはあいつにこう言った。
「いい加減迷惑なの!それにあたしは羽月じゃないし、これ以上あたしに付き纏うなら警察呼ぶから!」
これだけ言えば大丈夫って思ってた、けど。
『何言ってんだよ羽月ぃ、付き纏うなんて人聞きの悪いこと言うなよー…俺、お前の家何処にあるか知ってんだぜ?もし警察を呼ぶようなら…分かってんだろ?』
それ以来あたしは警察にも言えず今までただじっと我慢してきた。
…けれど、今日からあたしの人生が変わることとなるのだ。
『おーい羽月、無視するのかァ?……今からそっち行ってもいいんだぞ?』
「…ッ、やめて!」
『クククッ、その慌てた声が堪らねぇよ羽月ィ〜』
ゾクッ…
「も、もう行くからっ…」
『プッ、あっはははははッ!!……また明日ねうーづき♡』
プツッ……プープープーッ…
大丈夫、こんなの忘れちゃえばいいんだから…っ、学校に行けば和奈も居るし、大丈夫…大丈夫だから。
あたしは心を落ち着かせて制服を着た。
あっ、ちなみに和奈っていうのは昔からの幼馴染でいつもあたしの相談に乗ってくれるすっごく頼りになる女の子。
日本人形みたいな綺麗な顔立ちで髪の毛もツヤツヤのサラサラの腰まであるストレートの黒髪をポニーテールにしている。
目は二重の大きな黒目、鼻は高過ぎず低過ぎず丁度良く、唇なんて女子でもキスしたくなるくらいぷるっぷるのピンク色をしている。
これらをふまえて一言で言うと【ザ・世界一の美少女!】って感じ。
だから昔から和奈と並んで歩くと男達の視線がいつも痛く、あたしは少し苦手だ。
だってあたし、髪は茶色で枝毛いっぱいで、目だってちょっとつり目気味だし唇なんかリップがないとカサカサだし…正直いい所なしって感じ。
でもだからと言って和奈と歩くのが嫌なわけじゃない。