レモンキャンディ
「なにか取りに来たの?」
少しトクトク鳴る胸に気付かないフリをして聞いた。
「帰ろうとしてたんだけど、雨が降って来たからさ、傘取りにきたんだ。」
「そうなんだ、私折りたたみとか常備してないからこういうときにいつも困るー。」
「そっかー。」
少しぶっきらぼうにいった彼は折りたたみ傘で私の脇腹をつついた。
「な、なに?」
「はい。」
またさらに私に傘を突きつけてきた。
「持ってっていいよ。」
「あっ、でも大矢君濡れちゃうよ?」
「大丈夫だよ、俺合羽も持ってるから。」
謎の女子力に感動しながら私は彼の黒い折りたたみ傘を手にしていた。