レモンキャンディ
帰り道私はぼんやりしていた。
体育祭楽しかったけど疲れたし、
なにしろ彼のことがやっぱり気になっていたから。
だから本当に不注意だった。
いつもだったらもっとアンテナはってるのに。
気がついたときにはヤツは私の後ろにいた。
「さーおーりーちゃん。久しぶりだね。」
いやらしい声。
穢れた手が私に抱きついて離れない。
絶対に忘れることなんてできない。
恐怖のあまり声も出せなくて硬直する。
「ずーっと見てたよ。でもさおりちゃん避けるんだもん。さみしかったなー。だから今日はじっくり楽しんであげる。」
いや、
と怯える私の声は暗闇のなかに消され
私は彼の黒い車に引き込まれていた。