レモンキャンディ






ふと横をみると彼がこちらを見ていた。



目と目があって3秒。



彼の顔がゆっくりこちらにくる。




近づく彼の頬を両手で包み込みその動きを制す。



私の手の中で不思議そうにする彼に伝えた。




「そういのは、好きな人とじゃないとだめなんだよ。」


そっと頬から手を離した。


「私はあなたのこと好きじゃないからキスしない。これから先こうやって二人で会うこともない。
今日はこのことをいいに来たの。」




相手の反応もまたず、
私は踵を返してもと来た道を急ぎ足で帰っていた。


歪んで見えても噴水は綺麗だった。


頑張った化粧も髪型も、
お気に入りの秋物のコートもこんな状況で来ていてもなぜか映えなかった。


あの一時間、私はとってもキラキラしていたはずだった。








< 96 / 115 >

この作品をシェア

pagetop