レモンキャンディ
ふと横をみると彼がこちらを見ていた。
目と目があって3秒。
彼の顔がゆっくりこちらにくる。
近づく彼の頬を両手で包み込みその動きを制す。
私の手の中で不思議そうにする彼に伝えた。
「そういのは、好きな人とじゃないとだめなんだよ。」
そっと頬から手を離した。
「私はあなたのこと好きじゃないからキスしない。これから先こうやって二人で会うこともない。
今日はこのことをいいに来たの。」
相手の反応もまたず、
私は踵を返してもと来た道を急ぎ足で帰っていた。
歪んで見えても噴水は綺麗だった。
頑張った化粧も髪型も、
お気に入りの秋物のコートもこんな状況で来ていてもなぜか映えなかった。
あの一時間、私はとってもキラキラしていたはずだった。