レモンキャンディ





思い出されるあの時のこと。

あれが同意だというのか。


自分を半壊させた原因を私の同意の上だというのか。




私は無言で黒板のそれをとりゴミ箱に捨てた。



どうせこんなもの誰かのイタズラだ。


気にするな。



「さおり、ちょっと教室でよ。」


ゆきが気を使って外へ連れ出そうとする。


「いいの、だって私は何も悪くないから。私はなんにも悪くないよね?」



ヒステリックな声をあげる私。

「そうじゃなくて、竜くんが来てるよ。」


もう涙がこらえられなかった。


カバンを自分の机におき教室から出た。



「さおり、大丈夫か?」


竜が泣く私の肩をつかむ。
そして、どこかへ連れて行く。


気が付くと屋上にいた。



「私は、、同意なんかじゃない。」


竜に向かって言っても意味がないのに、
それでも言わないと気が済まなかった。


「私がなんで淫乱だなんて言われないといけないの?」


「私が何をしたっていうの?」


竜の胸をこぶしで叩く。


本当にこの言葉を伝えたい人は竜じゃないのに。



すると、少し汗臭い匂いが私を包んだ。


私はその臭い胸で泣いた。


お父さんに会いたくなった。



「ごめん、八つ当たりして。」


「いいよ。」


「竜ってほんと、お父さんみたい。」



私は笑って見せた。


竜は少し複雑そうな顔をして笑った。






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