もっと君と   愛し合えたら
α.忘れなくてもいい
私は安藤夕美。

以前の勤務先が倒産し

社員はバラバラに散ったが

年下の進藤たくみとはその後も付き合っていた。

週末は必ず彼の部屋で過ごした。

半同棲のような付き合いをしていた。

最近私のではない

別の女の匂いに気がついていた。

ベッドの下

足元近くにブレスレットが落ちていたり

いつもと違うシャンプーになっていたりした。

たくみは何も言わないし

私も何も聞かないでいた。

私は仕事が忙しくて平日は会えないので

彼に会うのは本当に週末だけだった。

彼の部屋へ行くたびに私の知らないものが増えてきた。

私にはわかっていた。

若い彼には私だけでは無理だということを。

それを言ってくれないことが悲しくてつらかった。

もう今日で終わりにしよう

そっと離れて会わないことにしよう

と何度も思った。

< 1 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop