もっと君と   愛し合えたら
ゴボゴボという水の音は何度潜っても私には新鮮で心地良い音だった。

地上とは全く違う光の少ない暗さにも目が慣れてきた。

海の中は暗いのだ。

野瀬さんの合図でマスクを外した。

彼は私よりも先に外していた。

海の中で目を開けるのは初めてだった。

海水が目にしみた。

私は完全にマスクを外し

息を止めて海中で彼を見つめた。

私の目の前で彼はOKと指で示した。

もう海面まで上がっていってもいいのだろうか?

息が少し苦しくなってきた。

もう少し我慢して吐きながら上がっていこうと思った。

彼が私の目をのぞき込んできて何か言いたそうだった。

何かしら?

私も彼の目を見つめて何が言いたいのか読み取ろうとした。

と突然、この海の中で彼がキスをした。

私はびっくりしたけれど

目を閉じて彼の唇を感じたかった。

息が苦しくなった私に彼が口から息を入れてくれた。

私たちはキスしたまま海面へ浮上した。

彼は私を抱きかかえたまま誘導してくれた。

< 12 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop