もっと君と 愛し合えたら

私はたくみの腕の中にいた。

「夕美さん、どうして俺に抱いて欲しいなんて言ったんだ？」

「私の今の本当の気持ちだったから、ずっと思っていたことだったからよ。」

「気が済んだ？俺に抱かれて。」

「自分の想いに区切りがついたわ。」

「俺はもうあの頃の俺じゃない。何が大事で何がそうでないか、ちゃんとわかっているつもりだ。夕美さんのこともずっと気持ちにわだかまりが残っていたんだ。」

「もういいの。あなたを許せたから。私も前に進みたいの。最後にもう一度抱いて。」

「夕美さん、俺にとって夕美さん以上に俺のことを想ってくれる人はこれまでもこれからもいないと思う。俺はいつもそばに女がいても、それが夕美さんじゃないという寂しい気持ちをずっと味わってきたんだ。俺だって夕美さんを愛したことを忘れたくない。俺がこんな風に言うなんておかしいだろ？」

「いいえ、やっぱり私もあなたを愛したことに間違いはなかったって思えるの。だって、こんなに素敵な人だったじゃない？お願い、もう一度愛して、もう二度と触れられない人だから。私が帰るのは違う人の腕の中だから。あなたとは今だけ愛し合うことを許されたから。」