お姫様はふたり
二人しかいないはずの教室に別の声がとんできた。


ドア付近には莢が立っていた。


そして私たち二人に近付いてくる。


「どういうことだよ?」


亮平は莢を睨む。


「王子様に群がる姫はひとりなわけないじゃない。お妃様だってきっと王子様を狙っていたはず。どんな話も王子様とお姫様だけしか出てこないわけないし。話はおかしくならない」


莢…。


ちょっと、論点ズレてるけど…。


「それにさっきから真琴を引き止めているみたいだけど。すっごく見苦しい。ほんとに真琴のことが好きなら、真琴の幸せを願いなさいよ」


亮平は軽く莢を睨むと、そのまま教室から出ていった。


たぶん、言われたことが図星だったんだと思う。


「真琴。帰ろっか」


莢はいつもの見惚れそうな笑顔を浮かべていた。

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