AfterStory~彼女と彼の話~
女性用のお風呂は内風呂と露天風呂もあって、私はそれぞれに入りながら仕事の疲れを癒していく。

「幸雄さんも今頃疲れが取れていたらいいなぁ」

普段からとても忙しい人で休日なんて殆ど無いのに、こうして旅行へ行けるのはとても嬉しかったし、この旅行がリフレッシュになってくれたらいいなって強く思う。

温泉で逆上せないように気をつけて上がり、浴衣に着替えるんだけど、ここで奮発した下着を着ることになった。

色気がない肌色から卒業しなきゃとお店であれこれ悩みながら選んだので、ちょっとは良くなったかなぁと思う。

浴衣に着替えて外に出ると、廊下にあるベンチに幸雄さんが座っていた。

「お待たせしました」
「ううん、そんなに待ってないよ」
「温泉はどうでした?」
「足が伸ばせたり出来たし、仕事を忘れてゆっくり出来たのは久しぶりだったよ。気持ち良かった」

温泉のお陰なのか幸雄さんの顔はほんのり桃色で、癒されたなら良かった。

私たちは食事処で夕食を済ませて部屋に戻ると、布団が二組ピッチリと隙間なく敷かれている。

「何かさ…、こういうのは照れるね」
「私もそう思いました」

2人きりの旅行だから当たり前だけど、隙間なく敷かれている布団を目の前にしちゃうと緊張してしまう。

何度も幸雄さんの部屋に泊まりに行っているのに、こうした空間は特別に感じてしまうのは私だけかな。

「湯冷めするといけないし、布団に入る?」
「……」

私は頷くとお互い布団に入って、顔が見えるように体勢を向き合わせた。

「楽しい時間って、あっという間ですね」
「うん、一日じゃ足りないなって思うよね」
「私も…、一日じゃ足りないです…」

楽しすぎて過ぎ去ってしまう寂しさを含むのは本当で、幸雄さんの顔をじぃっと見つめる。

「……美空、こっちにおいで」

幸雄さんが布団を捲って誘う姿に私の体温はより高くなり、幸雄さんの布団の中に入って行った。
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