AfterStory~彼女と彼の話~
 髪も服もお気に入りの靴も雨によってびしょびしょで、沢山の水を吸っている靴は重くなって走りづらくてしょうがない。

「あそこのコインランドリーに避難するぞ」

 雨宿りのために入ったのは1軒のコインランドリーで、私たち以外には誰もいなく、大きなドラム型の洗濯機と乾燥機がいくつもあり、その中の1つの乾燥機だけが稼働していた。

 これを使っている人はどこかに行っているのか―…

「っくしゅ」

 雨に降られて全身がびしょ濡れだから、体が震え始めてる。

「風邪を引くといけないから、ここで服を乾かそう」

 海斗さんはポロシャツを脱ぎ始め、乾燥機のふたを開けてポロシャツを放りこんだけど、私も脱ぐことは抵抗がある。

「海斗さん、ここで脱ぐのはちょっと…。誰かきちゃったらっ、っくしゅ」
「体はそうは言ってないな」
「ですね。でも脱いだら余計風邪を引きませんか?」
「そうだな…」

 鼻をすすりながら海斗さんを見ると、海斗さんはきょろきょろとコインランドリー内を見渡している。

「緊急だから、一枚借りる」

 海斗さんは稼働している乾燥機のふたをあけて、その中から1枚の大きなタオルケットを取り出した。
 (※本来はこういうことは違反ですが、話しの展開上こういう形にしました)

「服を脱いだら、これを体に巻けばいい」
「分かりました」

 心の中で「このタオルケットの持ち主さん、お借りします」と言い、海斗さんからタオルケットを受け取り、びしょ濡れになった洋服と下着を乾燥機に入れて、お金を入れて乾燥機のスウィッチを押した。

 乾燥機から風が吹く音が聞こえ、蓋越しから見える服は回転している。

 私はタオルケットを体に巻いたんだけど、海斗さんも上半身がさらされているので風邪を引いちゃうかもしれない。
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