AfterStory～彼女と彼の話～

　先に私が四つ葉出版社を出て、幸雄さんと待ち合わせをしている駅の改札口前に来たら、帰宅時間とあって沢山の人が改札前を行き来している。

　私の隣に１人の男性が並び、その男性はポロシャツとデニムの組み合わせのファッションで、何度も腕時計で時間を確認している素振りをして、私と同じようにここで誰かを待っているのかな？

　すると背中をポンっと叩かれたので振り返ったら、幸雄さんが立っていた。

「お待たせ」
「そんなに待っていないですよ」
「そう？それじゃあ、行こうか」
「はい」

　幸雄さんから差し出された左手に私は右手を重ねると、幸雄さんは私の右手をぎゅっと握りしめて、お互いはにかんでスーパーに向けて歩きはじめた。

　スーパーに着くと、今回は疲れをとって欲しいから生姜を効かせたお肉料理を作ることに決めて、必要な材料をかごに入れる。

　お会計を済ませていざスーパーを出ようと思ったら、滝のような雨が降っていた。

　スーパーの前をびしょ濡れになりながら走る人たちが行き交い、私たちは濡れたくないと思ってスーパーの屋根の下で立ちすくむ。

「この様子だと、当分やみそうにもないですね」
「そうだね。それだったらタクシーを呼んで、俺の部屋に行った方が濡れないかも」

　幸雄さんはスマホを取り出してタクシーを手配すると、やがてスーパーの出口前に一台のタクシーが停車した。

「あれだ。行こう」
「はい。うぁ…、雨が凄い」

　タクシーまでほんの少しの距離しか離れていないけれど、滝のように降り続ける雨は髪や服を濡らしていく。

　後部座席に座り、幸雄さんが運転手にマンションの住所を告げると、タクシーは動き出した。

　隣に座る幸雄さんの髪型は雨のせいでペタっとなっていて、普段はおしゃれな髪型なのに勿体無い…、私はバックからハンカチを取り出して幸雄さんに差し出す。

「幸雄さん、髪が濡れているので使って下さい」
「美空こそ濡れているのに、大丈夫？」
「私は大丈夫です」
「ありがとう」

　幸雄さんは目を細めてハンカチを受け取ると、ペタっとなっている髪をハンカチで優しく拭いていく。

　そしてタクシーが幸雄さんが住むマンションの玄関前に到着し、幸雄さんが代金を支払い、私たちはタクシーから降りた。